人はあなたの鏡？

心理学という学問は、“投影”について学ぶ学問ということもできます。

“投影”とは、「自分がすること、考えること、感じることなどを、他の“人”や“物事”に映し出し、そして、判断する」ことをいいます。

たとえば、あなたは失恋したばかり。落ち込んだ気持ちで雨の降り出した空を眺めると、「空も泣いている」と感じたりすることもありますよね。

しかし、空の代わりに私が言わせてもらいますと、「ただの雨だし」となるわけです。空が泣いていると感じたのは、じつはあなたの心が泣いていたからであるわけです。

対人関係でいうと、怒りん坊の人がいると、私たちはその人に「怒るなよ」と怒りながら言うことがよくあります。

これは、「そんなにおまえが怒ると、こっちまでだんだん腹が立ってきたじゃねえか。ふだん、できるだけ怒らないようにとガマンしているというのに、おまえのせいで怒りがふくらんできちゃったじゃねえか」と感じているときによくあることです。

そして、怒りん坊の彼だけでなく、自分の心に対しても、「怒るなよ」と言っていることになるのです。

心にゆとりがあり、人に分けてあげられるぐらい愛に溢れているときは、そばで怒っている人を見ても、「あら、たいへん。助けを求めているのね」などと、マリア様のように反応できることもありますよね。

が、なにぶん、切羽詰まっている状況では、とてもとてもそうはいかないわけです。

たとえば、あなたが町を歩いていると思ってくださいね。じつは、必死にガマンし、半分もれそうになりながら、トイレに向かっています。
そのとき、人に呼び止められ、ゆったりとした口調で、「すいません‥‥、あの、渋谷駅に行くにはどちらの方向に‥‥」などと聞かれても、やさしくなどできませんよね。殺意を感じることがあったとしても。

あなたの対人関係のパターンは、じつはあなたが「自分自身とどのような関係性をもっているかのあらわれである」という心理学の法則があります。

そう考えると、対人関係を円滑に進めるためのポイントは、あなたが「自分自身のことを、やさしく、慈愛深く扱う」ということに帰結するようです。

私たちはいろいろなプレッシャーを自分にかけ、しょっちゅうイライラしながら生きています。すると、のんびりゆっくり過ごしている人を見ると、なぜかイライラしてしまいます。

本来ならば、イライラしているあなたに必要なことこそゆとりであるはずなのに、ゆとりをもっている人を見ると、イライラしてしまうわけです。

また、あなたが自分のひどく責めているとき、明るく楽しく笑いあっている人たちを見ても、「なにがおかしい！」と攻撃的な気分になってしまいます。

投影の法則でいえば、それはまさに、あなたが自分の中でしていることです。自分がゆとりをもったり、喜びを感じたりすることを認めていないので、あなたの外にあるゆとりや喜びを抹殺したいと感じてしまうのです。

私たちは、自分が自分に対してなにをしているのか、意外とわかっていないものです。そこで、この投影の法則を上手に使うと、自分の中でなにが起こっているのかを知ることもできるわけです。

つまり、あなたが外の人に対し攻撃的になっているとき、あなたは自分に対しても、その数倍、ひどい自己攻撃をしているわけです。