こんばんは。
カウンセラーの平です。
日曜日の恋愛心理学を原カウンセラーと隔週で担当しています。
人は、自分にないものをもっている人に魅力を感じると言われています。
これを、心理学で“相補性”といいます。
単純な例では、お金のない人は、お金持ちを見るとすごく魅力的に感じますよね。また、自分が頭が悪いというコンプレックスをもっている人は、高学歴の人を尊敬したりします。
一方、なんでもできるすごい人が、なにもできないどうしようもない人を放っておけなかったりすることがよくあります。
最近、「イチローが嫌いだ」というキャッチフレーズのCMが話題になっています。
人一倍努力家で、人一倍勤勉で、どんなときにも夢をあきらめないイチローを見ていると、自分をちっぽけに感じてしまう‥‥、という、嫌っているのか、尊敬しているのか、複雑な思いを映したCMです。
まさに、イチローはストイックな成功者であるわけですが、私の知るかぎり、このタイプの人の心は“依存的な存在”を求めているようです。そういえば、イチロー選手は大の犬好きとして有名ですね。
同じように、ペットであったり、お孫さんであったり、はたまたものすごく手のかかる若い愛人であったりと、成功して、なんでも自分で可能にしてきたストイックな自立タイプの人は、依存が上手に表現できる相手に非常に惹きつけられます。
私の知り合いに、ある社会的に成功している女性がいます。その彼女のもとにやってきた新しいボスは、3年前に離婚したというスーパー自立の男性でした。
仕事で自立することを目指してきた彼女にとって、ボスは一つの成功モデルです。そして、尊敬の気持ちが恋に変わるのに、そんなに時間はかかりませんでした。
彼女はボスにほめられ、認められたいがために、より完ぺきな自分であるように努力を重ねました。
しかし、ボスが仕事以外で彼女に関心をもってくれるそぶりはありません。
もう結婚にはこりごりのようで、キャバクラに行っては若い女の子と遊んでいる様子。本気の恋をする気は、まったくなさそうに見えるわけです。
で、悩む彼女と話していたところ、“競争”のマインドが見え隠れしていることが感じられました。
彼女の中にある男性性のエネルギーが、ボスと競争しているわけです。
「あの完ぺきな男を、なんとか私の女性性の魅力で落とし、この競争に勝とう」と思っているのに、「ボスのほうが一枚上手で、私はいつも負けてばかり‥‥」というかんじでしょうか。
思うような反応をしてくれないボスに対し、彼女はどんどん依存的になっていきました。それでも振り向いてもらえないので、感情的になったり、ヒステリックになったりしてしまったりすることも‥‥。
もう、自分でも許せないほど“最低な自分”であり、「こんな自分ではボスに嫌われる」と思うわけですが、キャバクラ嬢のレベルに比べると、多少のわがままもヒステリーも、ボスから見ればカワイイものです。
もっと言えば、スーパー自立のボスの好みは、どうしようもないほどわがままな女性なのです。
そんなわけで、彼女が自己嫌悪で悶々としていたとき、「どうしたの、最近？」とボスに食事に誘われたわけです。
そして、「どうしようもない、自分のすべて」をボスに伝えたところ、「ロボットのように見えてきたきみも、人間だったんだね」、で、一気に距離が縮まるという奇跡が訪れました。
彼女の目指していた完ぺきさは、ボスにはロボットの冷徹さのように映っていたのですね。そんな彼女が泣き言を言っていることが、ボスには人間らしく感じられ、好ましく映ったようなのです。
いまのところ、おつきあいには至っていないのですが、彼女とボスの関係は、それまでとは明らかに変わりました。
自分では「絶対、きらわれる」と思っていることを、好ましく思ってくれる、そんな人もこの世の中には存在するのですよ。
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