不思議なカップル

こんにちは。神戸メンタルサービスの平です。
日曜日・恋愛心理学講座を原カウンセラーと隔週で担当しています。

昔、私の友人にとてもおもしろい夫婦がいました。

ご主人は交友関係が広く、会社を経営する社長様でした。奥さまは外交的なご主人とはまったく反対で、内向的なお嬢様タイプでした。もっといえば、かなりわがままなお嬢様だったのです。

ご主人は昔からモテるタイプで、学生時代はラグビー部のキャプテンをするなど人望も厚い人でした。そんな彼をボーイフレンドやダンナさまにしたい女性はいっぱいいたわけですが、そのモテモテの彼が選んだのが、とても手のかかるわがままな女性だったわけです。

「よりによって、なんであんな彼女を‥‥？」と当時はみんながウワサしたものです。

彼女は外面はとてもいいのですが、家では炊事・洗濯一切せず。お掃除はちょっとして、子育てもまあまあするものの、家庭的な奥さまと呼ぶにはほど遠いタイプの人でした。

そして、料理は彼の担当なのですが、奥さまがなまじきれい好きなところがまたタチが悪く‥‥。彼が出張で九州にいたとしても、いきなり携帯電話が鳴るわけです。

彼はどのような重要な仕事の最中であっても、奥さまからの電話は必ず取ります。どのような理由であれ、奥さまからの電話に出ないとあとでどんな目に遭うか、体で学んでいるからです。

で、きょうの電話は、きのうの夜、彼が料理したときのお鍋やお皿が洗わぬままキッチンに山積みになっていたことへのクレームであったわけです。「自分、なに考えてるわけ？　なんで、洗うてから仕事に行かへんねん！」。

「すいません」と謝る彼に、「ほんまに悪い思てるんやったら、いますぐ帰ってきて、皿洗え！」などという彼女。

そんな奥さまについて、彼自身、「そのへんのヤクザのほうがよっぽどタチがいい」とふだんから言っています。が、その話を、彼はとてもうれしそうに、ニコニコと笑いながらするのです。

普通なら、この話を聞くと、「なんて嫁なんだ。ダンナは朝から働いているんだから、昼に起きてきて、ヒマにしているおまえが皿を洗えばよいだろう！」と思いますよね。ところが、彼はまったく違うのです。

彼はこう理解しています。昼前に奥さまが目を覚まし、ご主人がもう出かけてしまったことに気づき、すごく淋しい思いをするのだ、と。が、彼女は間違っても「淋しい」とは言えないキャラなのです。

で、てきとうな理由をつけて電話をし、「あなた、早く帰ってきて、淋しいの‥‥」と言う代わりに、ヤクザも顔負けのドスをきかせた声で因縁をふっかけてくわけです。「なにしとんねん、早よ帰ってこんかい！」、と。ぷんぷん！

彼はそれを知っているのです。そして、そんな言い方しかできない奥さまのことを「なんて、かわいいやつ」と感じているのです。

そして、奥さまも「こんなかわいげのない女を受け入れ、愛してくれるのはこの人しかいない」とわかっているのです。

つまり、とても素敵なカップルというわけですね。

しかしながら、そういう目でなかなか見てあげられないのが普通の人。なんとひどい嫁と弱気なダンナなのだろうとこのカップルを評価してしまうわけですね。

そして、ご主人が嫁の悪態をグチると、「嫁はんのシリに敷かれてばっかりではあかんで。たまにはポンポンと怒ってやらな図に乗ります！」と言うわけですが、そう言われた彼は「もうとっくに図に乗られていますので、手遅れです」とうれしそうに返す有様‥‥。

しかし、じつは彼のほうこそ、奥さまを手のひらで転がしているのかもしれないわけです。きゃっ

＊　＊　＊

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