こんにちは。神戸メンタルサービスの平です。
日曜日・恋愛心理学講座を原カウンセラー と隔週で担当しています。
みなさんからよくいただくご相談の一つに、「彼のことをほんとうに愛しているのかどうかわかりません」というものがあります。
そういう方とお話ししてみると、「自分を満たしてくれる人がいると、好きになってしまう」という傾向が強いことに気づきます。さらに、そのことが悪いことであるかのように感じてしまう場合も多いようです。
ここで、私たちが“愛”と呼ぶものについての自己概念をちょっと調べてみましょう。
子どものころの私たちは、自分ではなにもできませんでした。自分だけではまったく自立できていませんから、あれこれ面倒を見てくれて、いろいろなものを与えてくれる親が必要です。
そして、面倒を見てもらったり、なにかを与えてもらったりすることで「愛されている」と思い、それをしてくれる人を「自分を愛してくれる人」と認識します。
しかし、どんどん成長し、自分でいろいろなことができるようになってくると、「子ども扱いするなよ」とか「そんなことぐらい、自分でできる」などと言いながら、自立の度合いを深めていきます。
やがて、自分ができることや持っているものを、だれかに与えてあげたくなるわけです。
「あげられる」ということは、「自分が持っている」ことを確認することとなり、実際にそのだれかに与えることで、昔々に感じていた「自分はなにもできない」、「自分はなにも持っていない」といった恐れを払拭することにもなるわけです。
この時点で、私たちには「自分の愛を受け取ってくれる人」が必要となります。
自分がだれかの役に立つということが、自分の存在理由になるのです。愛を受け取ってもらうことにより、「自分は存在していいんだ」という安心感を手に入れることができるのですね。
みなさんの中の多くは、失恋すると、「パートナーが自分を愛してくれなくなるので傷つく」と思っていらっしゃるのですが、じつはそうではなく、あなたの愛を「すみません、受け取ることはできません」とパートナーから拒絶されることで傷ついてしまうようなのです。
あなたが「愛したい人に、あなたの愛を受け取ってもらえない」ことで、失恋というものが生まれるわけです。
反対に、あなたが愛そうと思っていない相手だとしたら、どんなに拒絶されようが、あなたは傷つくことはありません。なぜなら、あなたは愛を受け取ってほしいとは思っていないからです。
では、なぜ、「愛したいのか、愛したくないのかわからない」という状況が生まれるのでしょう？
それは、「彼が私の必要なものをいっぱいくれるのであれば、彼のことを愛します。くれないのであれば、愛しません」と思っているからである場合が多いようです。
誤解のないように言っておきたいのですが、そう思うことがいいとか悪いとかということではありません。ほとんどの人間はこういうことを考えますし、実際にそうしているのです。
ただし、このように、「欲しいものを得るために、彼を愛する」という状態を、私たちは“愛”ではなく“ニーズ”と呼びます。
「あなたのためなら、なんでもするわ。そのかわり、私から離れたら殺すわよ」と言っているわけです。
つまり、「私がいちばん欲しいあなたの愛をくれているかぎりはなんでもするけれど、もし、それをくれなくなったら、あなたには存在価値はない」という宣言なのですね。
「欲しいものを手に入れるために愛したのに、欲しいものが手に入らなかった」という状況になったとき、私たちは傷つきます。
私の先生が、『傷つくならば、それは「愛」ではない』というエグい本を出しているのですが、この本が言っているのがまさに、「ニーズと愛は違うよ」ということであるのです。
しかし、そうはいっても、私たちのほとんどが恋愛によって傷ついた経験をもっているわけで、現実はなかなか建前のようにはうまくいかないわけです。私たちは、いろいろな人に恋をし、迷い、傷つき、そしてまた人を好きになって‥‥という過程の中で、愛を学び、愛を育んでいくようです。
もし、「彼のことをほんとうに愛しているのかどうかわかりません」いう悩みをもっていらっしゃるのだとしたら、あなたの中には「ほんとうに心から彼を愛したい！」という思いがあるということに気づいてほしいのです。
私はカウンセラーとして、そのように迷っていらっしゃるみなさんのことを素晴らしいと感じます。
なぜなら、「ほんとうに心から彼を愛したい！」という思いこそが、この悩みをつくっているからです。その思いがあるのに、彼を愛しているのかどうかわからない自分がいるから、迷ったり苦しんだりするわけです。
いろいろなレッスンのあと、あなたのその願いは、必ずや聞きとげられるはずです。どうか、あきらめずにその思いをもちつづけてくださいね。
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