こんばんは。
カウンセラーの平です。
日曜日の恋愛心理学を原カウンセラーと隔週で担当しています。
ある女性が、おつきあいしている彼のことでご相談にみえました。
前々から心があまり強いほうではなかった彼が、ついに会社に行けなくなってしまったというのです。
彼女もはじめのうちは、「しばらくゆっくり休んで、出直しなよ」と気楽に構えていました。
しかし、1カ月寝込んでも、まったく動けず、気力すら湧いてこない彼のことがどんどん心配になってきてしまったのです。
彼女はもちろん、「彼になんとか元気になってもらいたい」と願っています。
が、彼はというと、その思いをひしひしと感じるほどに、「期待に応えられない自分は最低最悪な奴だ」と自分を責めてばかりいます。
そんな彼に引きずられるように、彼女も自分を責めるようになり、ご相談にみえたときは表情からは笑顔が消えていました。
彼女は言いました。「なんで、こんなふうになっちゃったのかな‥‥。私のせいなのかな‥‥」。
彼が元気に戻り、バリバリ働けるようになったなら、彼女の顔にもあっという間に笑顔が戻ることでしょう。
しかし、彼の問題の根は深く、なかなかそうもいきません。そこで、私は彼女にこうアドバイスしました。
「いまはまず、最悪のことが起こらないように、というところからケアしていきましょう」
「最悪‥‥?」
「ええ、たぶん、彼はいま、最悪のことを想定していると思いますよ」
そう、彼はこんなことを考えているはずです。
(このまま一生戻れないのなら、生きていても意味がないし、彼女の足手まといになるだけだ‥‥)
(そして、こんな自分はいずれ彼女から見限られてしまうに違いない)
(なんで、こんなことになっちゃったんだろう‥‥。ああ‥‥、もう死にたい)
ですから、「まずは、彼がもう死にたいとは思わないようにするというところからスタートしましょうよ」と提案したわけです。
現在のようになにもできず、引きこもっている状況では、彼は「自分は迷惑な存在であり、だれの役にも立たない」と自分を責めています。
専門用語で“自己重要性”というのですが、人間は「誰かの役に立ちたい」と思っているものなので、役に立てないというのはすごくつらいことであるわけです。
今回の彼の場合も当然、彼女の役に立ちたいと思っていますから、その思いが大きいほど、現状を憂い、役立たずな自分を責めてしまいます。
しかし、彼女がある話をしたときから、彼の様子が劇的に変わってきたのです。
それは、彼女のおとうさんの話でした。
おとうさんは心臓病をもっていて、行動に制限があったため、家にずっといることが多かったそうです。
そのおとうさんを見るのがいやで、彼女はあまり実家に帰らずに過ごしていました。
その後、おとうさんは病院に入院したものの、短期間であっけなく亡くなり、彼女の心には大きな悔いが残っていたのです。
「なんで、もっとちゃんと看病してあげなかったんだろう」、という。
おとうさんのことに続けて、彼女はこう話しました。
「だから、今回のあなたのことは、神様が私に与えてくれたチャンスだと思うの」
その言葉が、彼にとって、すべての転機になりました。
彼の中に、「こんな状態の自分でも、少しは彼女の役に立てるのか」と思いが芽生え、そして、二人の関係はさらに親密になっていったのです。
人の心とは、ほんとうに不思議ですね。
自分のコンディションが悪いときさえ、誰かの役に立てないことがつらいことに感じてしまうのですから‥‥。
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