こんばんは。
カウンセラーの平です。
日曜日の恋愛心理学を原カウンセラーと隔週で担当しています。
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恋愛に関するご相談をうかがっていると、「二人の距離が近づくにつれ、なぜかぎこちなくなってしまう‥‥」というお話がよく出てきます。
「緊張してしまったり、意識してしまったりして、自然にふるまえなくなるんです」とか、「友だちづきあいのときは普通にしていられたし、みんなと一緒のときはぜんぜん大丈夫なんですけど、二人きりでデートをするようになったら、うまく話したりできなくなってしまって‥‥」といったものですね。
私たちカウンセラーはこのような状況をつくるものを“親密感への恐れ”と呼んでいます。
これは対人関係の初期段階にはよくあることで、子どものころにも同じようなことがあったかもしれません。
夏休み、いとこがあなたのおうちに遊びにきたときなどがそうです。すごく楽しみにしていたにもかかわらず、再開した直後はおたがいなにか緊張して、うまくおしゃべりしたりができない‥‥そんな経験はみなさんにはないでしょうか。
その後、大人たちに「子どもは子ども同士で遊んでおいで」などと言われ、いっしょに遊びはじめると以前のように自然に楽しく過ごせるようになってくるのですが、なぜか、最初はおすまししたり、ぎこちなくなったりしてしまうのですね。
よくわからないものや、知らないものを前にすると、私たちは緊張したり、不安や恐れを感じたりするものです。
それは、人との心理的な距離が近くなったときも同じで、近づけば近づくほど私たちの緊張感は高まります。
ちょっと想像していただきたいのですが、3m先に立っていた人が、あなたのほうにゆっくりと歩いてきたとします。どのぐらい近づいたときに、あなたは「止まってほしい」と思うでしょうか。
こんなとき、「すぐそばまで来てもいいよ」と思えるのは、あなたにとって親しく、近くにいてもいいと許可した特別な人だけですよね。
そして、逆の立場で考えてみれば、私たちは「これよりもっと、あなたに近づいていいですか?」と相手の顔色をうかがったり、遠慮したりしながら生きているといってもよさそうです。
自分にとって、あまり近くにきてもらいたくない人がいるように、ひょっとしたら、自分も相手にとって好まざる人なのかもしれないと思い、様子を見ているわけです。
が、いったん、その壁を越え、自分は相手に望まれている人だと認識することができると、警戒の壁は崩れ、親密なおつきあいが始まるわけです。そして、この警戒の壁を壊す一歩手前あたりにあるのが、“親密感への恐れ”というものなのです。
男女関係というのはそもそも、一人の人との心理的な距離をどんどん縮めていくことで成り立っています。
まずは告白という、自分の好意を表現することから始まり、おつきあいが始まると、手をつないだり、チューしたりと関係性はどんどん親密感を増していくわけですが、それほどの親密な関係は、パートナーを自分の心の中に受け入れるということなしに作っていくことはできません。
そのとき、自分がパートナーにとっての喜びになっているという実感をもてるとよいのですが、「ほんとうは自分は迷惑なのではないだろうか」とか「自分はお邪魔なのではないか」などといった遠慮した気持ちがあると、警戒と防衛、恐れと不安をなくすことはできません。
この考え方の土台には、子ども時代のあなたと両親の関係が影響していることが多いようです。
子ども時代の私たちは自分ではなにもできないことから、自分は両親の足手まといになっているのではないかという不安をもっているといわれます。
あなたは、「自分は大雨の日に橋の下で拾われてきた子どもではないのか?」と考えたことはないでしょうか。また、なんらか、理不尽な扱いを受けたと思ったとき、「家出してやる」と押入の中に隠れたりして、プチ家出のようなことをしたことはなかったでしょうか。
このようなときの心理的な土台は、「捨てられる前に、自分から捨ててやる」という考え方であるようです。それを作っているのが、自分が迷惑な存在ではないかという恐れです。
しかし、親にとって子どもは喜びの存在です。いま、大人になったあなたは、その親の目であらためて自分で見てみれば、自分が愛されるべき存在であることを感じることができるでしょう。すると、パートナーに対する“親密感への恐れ”も和らげていくことができるようなのです。
ひょっとして、あなたのご両親はあまり上手にあなたを育てることができなかったのかもしれません。両親に「ありがとう」と言うのは、だれに言うのより恥ずかしいことかもしれませんが、こんどはあなたのほうから歩み寄ってみてください。それができた度合いだけ。あなたの親密感獲得能力は上がるようなのです。
この考え方を、あなたもぜひ一度、お試しあれ。
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